スクラン:対比構造分析の基礎と【#156】、および高野のプレゼント?

 
 【#156】は色々と面白いので、ちょっとそこだけ分析してみた。
 

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■ その1 対比構造の基礎が解る一コマ
 
 対比構造は、「同じ」ものを「同じ」、「違う」ものを「違う」とのメッセージを送る創作側の技術。
 
 それが簡単に表現されているのが【#156】の下段の右のコマ。
 
 「ガラッ!!」という効果音の下に、天満、八雲、サラ、高野の四人。それに表現として☆が二つと「!!」が一つ。
 並べられている順番からして、天満が「☆」、八雲が「!!」、サラが「☆」である。
 
 つまり、この「ガラッ!!」という反応において、「☆」である天満とサラの反応が「相似」、「!!」の八雲が天満やサラとの「対比」となる。
 
 表現されているのは理解度である。
 天満とサラの反応は「同じ」。
 二人とも誰かが来るとは思わなかったのだろう。
 
 また、「対比」されている八雲は、二人とは「違う」。
 誰かが来ると思っていたということになる。
 恐らく、播磨であると気付いていたことだろう。(※1)
 
 「☆」と「☆」だから「同じ」であり、「相似」。
 「☆」と「!!」だから「違う」であり、「対比」。
 
 単純なことだけれど、これが対比構造の基礎。
 
 【#156】の一コマが示すように、「相似」と「対比」はセットであれば、より解りやすくなる。
 「相似」を説明するには「対比」の例を別に挙げておいた方が良い。なぜなら、「違う」ものがあれば、「同じ」ことの意味が強調されるからである。
 また逆に、「対比」を説明するには、どこかで「相似」の例を挙げておいた方が良い。「同じ」ものがあれば、「違う」ことの意味が強調されるからである。(※1)
 
 
 
(※1)
 だけど、対比構造を意識して自分の創作で使おうと考えている人は、心して聞いて欲しい。
 対比構造は、物語の中で自然増殖する。
 対比構造をメインで導入してしまったが最後、物語が終わるまで対比構造を使い続けないと、メッセージが不安定になる。
 
 例えば、作中で、SとTが「相似」だと言うメッセージを送ったとする。
 それとは別に、後でSと「相似」のUというキャラを出したとする。
 その時、SとUが「相似」だという描写をどこかで行わなければ、「SとTの時は作者は「相似」だとメッセージを出してくれた。なのに今回は出ていない。なのでSとUは相似ではない」と誤読されてしまう可能性もあるのだから。
 
 対比構造というのは、シンプルでありながら、実に面白く、明確なメッセージが伝えられるすごい基礎技術なんだけど、同時に、物語を終わらせるまで、そのメッセージを送り続けなければならないという怖い技術でもある……。(※2)
 
 
(※2)
 逆に言えばね……。
 対比構造をメインに導入している作品を見つけたら、最後まで対比構造が使われている可能性が高い。
 対比構造が使われていると、色々な箇所の繋がりが作者の意図通りに把握できるから、物語の分析が実に面白い……(笑)
 (対比構造は、創作側が正しいメッセージを送るための技術。なので、対比構造は情報を作者の意図通りに読む分析技術でもある。今回の「☆」と「!!」の例の様に、「同じ」ものを「同じ」、「違う」ものを「違う」と言ってるだけなんだから)
 
 

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■ その2 「素敵なクリスマスプレゼント」
 
 さてさて。
 サラのメールに届いた、高野の言う「素敵なクリスマスプレゼント」とは何か?
 
 とりあえず解は不明として、物語の落ちから「クリスマスプレゼント」となりえたものを考えてみる。
 
 1.播磨が天満に会えた。
 2.八雲が播磨に会えた。
 
 だけど、物語を読むと、播磨に助けられたのはアクシデントに近かったらしい。
 高野が考えていた基本路線は、みんなして花井に助けられることであり、播磨は花井が来なかったときの予備だったのだろう。(高野は、「八雲のあの人は花井」だと思っていた)
 
 とはいえ、高野が考えていた「素敵なクリスマスプレゼント」とは、八雲を好きな人に会わせること。(予定していたプレゼントは違ってしまったが、結果的に良いプレゼントになった)
 
 また、サラにもメールを送っているということは、八雲との「相似」で、サラも好きな人に会えたということになるのだろう。サラの好きな人はこの話の段階では八雲。よって、高野からのクリスマスプレゼントはちゃんと届いていることになる。
 
 では、他に登場しているキャラ達はどうだろう?
 
 播磨は天満に会えた。(相似?)
 花井は八雲に会えなかった。(対比)
 
 天満だけは、浮くことになるが、八雲が緊急で呼んだものであって、高野の想定には無かったのかも知れない。
 
 
 ついでというか。
 本当に書きたかったのは此処。
 
 
 高野は花井に会えなかった。(対比)
 
 
 実は、高野が今回の策を練り上げたのは、八雲をだしにして、クリスマスに花井に会いたかったんじゃないかと……。(八雲は、花井を召喚するための釣り餌)
 
 この説が当たっているなら、高野も可愛らしい女の子というわけだ……。(悲恋路線まっしぐらだけど……)
 
 この高野のかわいさは、【#138】を思い出してくれると更に強化される。
 【#138】では、修治をだしに天満を呼び出した播磨を、高野がジト目で見ている……。
 他人の行為を見て非難する割には、いざ自分の身になったら、矛盾しているにもかかわらず、花井に会いたいという欲求を押さえきれなくなって、八雲をだしにして会えるように仕組む策をつかっちまったんだよねえ……。
 
 
 しかし……。【#156】は複雑な回だわ……。
 まあ、高野が関わると、大抵複雑になるんだけど……。