スクラン:播磨告白分析

 どこからか電波を受信……。
 折角なので、ちょっとやってみた反復構造分析による簡易播磨考察。
 
 

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■ 『反復』とは?
 
 『反復』とは、同じ軸を持つ『自』と『自』の比較であると同時に、そのキャラに置かれたマイルストーンである。
 『反復』した地点には標がきざまれ、キャラの心に──あるいはそれを見る読者の心に──歴史となって残る。
 マイルストーン同士の差異は、成長の証となる。反復の最初に為し得なかったものが、反復の最後に為し得るならば、『最初のマイルストーン』から『最後のマイルストーン』までの方向性は、失敗から成功へのベクトルを形成する。
 
 今回は、播磨による告白失敗の『反復』を分析してみることにした。
 
 

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■ その1 播磨の告白の抜き出し
 
 播磨による告白未遂、あるいは告白失敗は、15回。(どれを告白に数えるかの線引きで、数が違ってくるかも……。また、私の分析の場合、抜き出し忘れもあるので注意……)
 
 1.名前を書き忘れた手紙。【#06】
 2.トラックに轢かれて失敗→記憶喪失。【#18】
 3.絃子に誤爆告白。【#19】
 4.沢近へ誤爆告白。【#33】
 5.谷先生へ誤爆手紙。【#35】
 6.天満相手の告白練習で、結局言えず。【#45】
 7.きもだめし後の雨宿りで、結局言えず。【#57】
 8.ピョートルに誘拐。【♭09】
 9.校舎の屋上で天満に誤解されて言えず。【#86】
 10.Tシャツ選び中に、一瞬告白する気になるも、次のコマで消滅。【#98】
 11.髪型で暗示するも、届かず。沢近、あるいは八雲だと思われる。【#114】
 12.花束をプレゼントしようとするも、天満を慰めるために烏丸名義に。【#141】
 13.天満家で夜に強行するも、伊織に誤爆。【#147】
 14.天満家で夜に強行するも、追い出される。【#148】
 15.従業員さん姿で、天満に告白するも、演技上のものという認識。【#153】
 
 あと、参考までに。
 A.漫画の中での告白【#26】
 B.漫画の中での告白【#92】
 C.台詞を読む演技の中での告白【♭21】
 D.妄想の中での告白【#114】
 E.夢の中での告白【#137】
 
 
 

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■ その2 テーマからの告白パターン
 
 その1で行った抜き出しを、四つのカテゴリに分類してみる。
 
《 播磨のうっかりミス、あるいは運命の介入が 3回 》
 1.名前を書き忘れた手紙。【#06】
 2.トラックに轢かれて失敗→記憶喪失。【#18】
 8.ピョートルに誘拐。【♭09】
 
 
《 誤爆告白 4回 》
 3.絃子に誤爆告白。【#19】
 4.沢近へ誤爆告白。【#33】
 5.谷先生へ誤爆手紙。【#35】
 13.天満家で夜に強行するも、伊織に誤爆。【#147】
 
 
《 天満を含む周囲の誤解によるもの = 4回 》
 11.髪型で暗示するが、沢近あるいは八雲に向けてのものだと思われる。【#114】
 14.天満家で夜に強行するも、追い出される。【#148】
 15.従業員さん姿で天満に告白するも、演技上のものという認識をされる。【#153】
 
 
《 タイミングの逸失、あるいは播磨の諦めによるもの = 5回 》
 6.天満相手の告白練習で、結局言えず。【#45】
 7.きもだめし後の雨宿りで、結局言えず。【#57】
 9.校舎の屋上で天満に誤解されて言えず。【#86】
 10.Tシャツ選び中に、一瞬告白する気になるも、次のコマで消滅。【#98】
 12.花束をプレゼントしようとするも、天満を慰めるために烏丸名義に。【#141】
 
 

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■ その3 反復のカテゴリ分けを踏まえた『最終反復形』の予測
 
 「播磨から天満への告白」がこれほどまでに繰り返され、しかもそれが満足な形で達成されていない以上、作者がさらなる反復──「最終反復形」を用意しているいることは間違いないと思う。
 
 考えられる「最終反復形」のパターンを、さらなる反復から予測すると、6つある。
 
 まず、『反復』の単純なカテゴリ分けからの予測が4つ。
 イ.播磨のうっかりミス、あるいは運命の介入により、最終反復先も失敗に終わる。
 ロ.天満を含む周囲の誤解により、最終反復先も失敗に終わる。
 ハ.誤爆告白により、最終反復先も失敗に終わる。
 ニ.タイミングの逸失、あるいは播磨の諦めにより、最終反復先も失敗に終わる。
 
 次に、『変化』を踏まえた予測が2つ。
 ホ.告白が正しい形で伝わるが、天満の心は動かせない。
 ヘ.告白が正しい形で伝わり、しかも天満の心が動く。
 
 
 まず、イ(うっかりミス、あるいは運命の介入)とロ(周囲の誤解)。
 最後の反復もこのパターンというのは、さすがに物語としてどうかと思う。なので、この可能性は採用しない。(とはいえ、ものすごい予想外のおもしろい落ちや展開が用意されている場合もあるので、完全にないとは言えないが……)
 
 つぎに、ハ(他キャラへの誤爆告白)。
 これの予測も物語としてはどうかと思う。だが、播磨周りの女性キャラに対して行われていない誤爆に「対八雲」への直接誤爆告白というのがある。伊織への代理誤爆ということで埋め合わされている可能性もあるのだが、気になる対比の『空白』ではある。(※1)(※2)
 
 そして、二(播磨の諦め)。
 これは反復の回数も多いので可能性は高い。
 事実、烏丸を思う天満の気持ちを最優先に考え、告白の言葉を飲み込む可能性も高い。(今回は抜き出さなかったが、告白以外で、天満の気持ちを思って予定していた発言や行動を変えるケースは幾度か反復している。しかも、巻を追う毎にその傾向は強くなっているため、播磨の成長ベクトルとしては、『諦め』に向かっていることがわかる)
 そもそも、大好きな天満のためを思って自らの恋を諦める、というのは【#25】のテレビの中にでてくる万石との相似であり、充分あり得るものである。
 
 
 最後に、『変化』を踏まえた二つの予測──ホ(告白成功でも、天満の心は動かず)とヘ(告白成功で、天満の心が動く)。
 ホは推測される結末の一つ。
 だが、天満と烏丸が両思いである以上、常識的には覆せない。
 また、ヘも推測される結末の一つ。
 現状では、ホが鉄板と見られるが、何かしらの運命の介入や、それまでのシナリオの流れで、この結末に至る可能性も残されている。
 
 
(※1)
 軸が合わせられているのに、起きていない組み合わせ(空白)というのは、後々埋められることが多い。
 たとえば、ライバルAとBとCがいたとして、主人公がAとBにキスをされたら、後にCもキスしてくる可能性は高い。
 
 とはいえ……。
 塚本違いによる、結婚式略奪【#62】を『告白の一形態』と考えるなら、すでにこの『空白』は埋まっていると考えられる。
 なお、『告白の一形態』は他にもあり、沢近へのお札依頼【#178】などもそれにあたる。ただ、やはりどれが告白で、どれが告白でないのか線引きが難しいため、今回は『天満への直接告白』の失敗だけを抜き出して分析した。
 
 
(※2)
 伊織の存在は、八雲と播磨の関係を分析する上で、すごく大きな存在。
 伊織は、八雲の代理であり、同時に播磨の代理でもある。
 伊織は八雲と播磨をつなぎ止める役割であるのだが、同時にその間に挟まった障害でもある。
 小説でほのめかされる伊織が居なくなる暗示の意味は大きく、それに至れば八雲と播磨の間に、新展開がもたらされる可能性が高い。(あるいは、新展開が来たら、伊織が居なくなる、というケースも考えられる。漫画でも、【♭29】の台詞が重い)
 
 なお、伊織に対比させられているのが、実は、沢近家の中村。
 主人の家に住み、主人の恋の為に動き、しかも主人と中身が入れ替わり(笑)、しかも強いなど。馬鹿な対比かも知れないが、おそらくは作者によって軸があわされている。
 
 

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 ■ まとまらないまとめ 
 
 スクランで、これほど反復されている『告白』が、天満と播磨の関係の締めに用意されていたとしてもおかしくはありません。(あえて踏み込むなら、『最終告白』のシーンを用意しているからこそ、これだけ『反復』させ続けているとも言えるのですから)
 
 ならば、播磨の告白の最終反復形がどのような形になるのか……。
 
 とりあえず、反復の回数が多いのは『播磨が自ら諦める』ことなのですが……。
 
 とはいえ、『反復』は『変化』引き立てる演出技法でもありますし……。(※3)
 
 さて……。
 本当に、どうなることやらなのです……。
 
 
(※3)
 反復構造分析と名をつけていながら言うのも何ですが、『反復』は実は『変化』への捨て石にされることも多いのです。(※4)
 『A→A→A→……』の果てに『B』に『変化』するからこそ読者は感動するのです。
 それまで報われなかった『A』の屍の山を見てきたからこそ、『B』へと昇華する一瞬が感動に変わるわけです。
 そう言う意味合いで、告白の失敗が『反復』を重ねているとしたら……。
 
 播磨の告白が天満に対して届く瞬間が来ると思います。
 天満が、それに肯くかは別問題ですが……。
 
 
(※4)
 というか……。
 作者がそのキャラの状態(『最新の反復形』)に満足していないからこそ、再度同じテーマを『反復』させているという側面も強かったりするんですよね……。
 ですので、『反復』が続く以上、最終的には『既存の反復パターンではない別のもの』──つまり『変化』が来ると予測するのは、当然とも言えるんです。(この説明、様々な作品で反復が行われる核心です……)
 
 ただし、『パターン』で魅せる物語は別です。
 「勝ち続けた末に優勝がある」とかなら、勝利の『反復』が崩れる訳がありませんし。
 まあ、最後の最後で負けることで、感動を与えるケースもあるのですが……。
 
 とはいえ……。
 あれだけの自分本位の天満馬鹿で、『告白』を『反復』し続けてきた播磨が、最後の最後には『相手の気持ちを考えて告白の言葉を飲み込む』という成長を遂げる物語になる可能性も高かったりします。
 というのも、作中の播磨の成長ベクトルは、明らかに『諦める』方に向かっているからです。
 
 このベクトルの先に『最終反復』があるとするなら、その達成は、『もっとも播磨に有利な状況ですら、播磨は天満に対して告白せず、天満の恋を後押しする』という地点をもって表現されると思います。
 
 これは、テレビを通じて表現されていた万石との相似であり、現在、反復を利用したベクトル分析からはじき出される一番可能性の高い推測になります。
 
 

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 ■ オマケ 私の予想。
 
 ちなみに、私のメイン予想は、こんな感じです。
 
 
『 ■■■■■■■■■■■■■■ 』という可能性も高いと思っています。
 
 
 あー……。
 
 本当は、この予想を書くために始めた考察なのですが、やっぱり現時点での公開は中止します……。
 外れる可能性の方が高いですし、当たっていたら当たっていたで読者の楽しみを奪うだけですからね……。
 
 ちなみに……、あらゆる可能性を横に並べれば行き当たるものです……。
 また、今回書いた文章の中に、その予測にいたる方程式のようなものが書かれていたりします……。
 (予想好きの私が言うのもなんですが、予想や分析や考察は「読む楽しみ」や「読んで気付く楽しみ」を奪う行為でもあるのです……。考えなかったからこそ驚けたはずのシーンなのに、予想していたことで「やっぱりな……」という反応だけになり、つまらなくなってしまうことが多いです。物語を最高に愉しむには、頭を空にし、先を考えない方が良いのかも知れません)
 
 なお、今回の私の予想は、外れても当たっても、この■で伏せた部分を公開しようと思っています。気になる方はご安心くださいませ。当たってないのに当たった振りをして、内容をかえるなんてこともしませんから大丈夫です(笑) 
 ですが、この■の数なら、文字数を合わせて、別の予測とすり替えることも簡単にできそうですね……。
 ──なら!
 『ヒNGNSR』という謎の言葉だけ残しておいて、後で解説をすることにします。
 
 …………。
 
 しかし……。
 
 何度考え直しても、恥をかく可能性が高いですね(笑)
 (ちなみに、この予想が当たったら、いずみのさんのデータベースで隠されている私のもう一つの予想も当たる可能性は高いです。ひいては、私が考えていたスクランの最終展開が当たる可能性も高くなります……)
 
 ま、外れても、「なるほどなー……」と思ってくれる予想だとは思うのですが……。
 (なお、最終展開がどうなると考えていたか、というのもいつか公開します……。予測が外れたとしても、分析手法の開示と、ついでに創作技術の開示になると思いますので)
 
 
 

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 ■ あとがき
 
 っていうかさー……。
 なんで、クリスマスイブに入ってからこんな分析を、新しくやってるんだろうか……。
 ……でも、まあ、私のクリスマスの『反復』ってこんなもんだよね……(笑)
 
 『反復』からの『変化』……?
 
 ……フフフ……。
 
 
 ……あ、でも、ここ一ヶ月で良いことはちゃんとあったよ!
 私は色々な名前を使い分けてるんだけど、その中の一つの名前の文章が、来年刊行される本に収録されることが決定したらしいのだ!(※5)
 
 やほーい!
 がんばった甲斐があったよ!
 
 しかし……、どうしてだろうねえ……。
 本職は本格ミステリと言い続けているのに、なんでそれ以外でばかり芽が出るんだろう……。(ちなみに、本格ミステリでは、芽すら出ていません……(笑))
 
 
(※5)
 でも、そんなに大したことじゃないですよ。恐らく、ページ数にして、十ページ強。しかも継続的じゃなく、単発のお話ですし。(それがすごく評価されたら、何かしらの機会はもらえるのでしょうが……。あくまで今回きりで、この名前の作品が二度と世間に出てこない可能性も高いんですよ(笑) そうならないように、がんばりますけどね!)