スクラン:八雲の♭初期展開からの#展開予測。

 ♭の主人公、八雲。
 この初期展開を見ると、小林尽は最初から、八雲を播磨に引き合わせる前提でキャラクターを作っていたことがわかる。
 
 ♭01は、心の見えない伊織(猫)に、餌をあげつづけて心が見えるようになる話。
 ♭02は、その伊織と修治(播磨の弟)が似ているという話。
 ♭03は、サラに出会う話。
 ♭04は、幽霊の女の子に「これから男の子を好きになる」という話。
 
 これの初期展開は、将来、播磨と出会い、播磨に惹かれていく下準備となっている。
 ♭01で、八雲の能力を提示しておき、しかも「心が見えない相手に興味を持つ」という話を持ってくる。しかもその手段は食事を与えつづけること。これは、#で展開される播磨と八雲の物語そのもの!
 見事に、♭と#は比例の相似になっている。(※1)
 
 ♭02で、修治と播磨が血縁関係だと示される。このタイミングでわざわざ新キャラの修治を出して、こんなイベントを起こさせるということは、播磨と八雲の後の関係を予定していたからこそできたものだと思う。
 でなきゃ、なかなか登場しない修治を持ってくる必要ないし。
 また、誰かと見合わせる予定を決めていなければ、♭02なんかやらずに、そのまま♭03と♭04をやればいいだけの話だし。
 
 ♭04で、これから恋物語にいくんだよ、というベクトルが明示される。
 以上の♭01と♭02がある以上、心の見えない播磨に恋心のベクトルが向かう、というメッセージが作者から出ているのは確実。(というか、♯01のカラー絵に、天満、播磨、烏丸、八雲の四人がかかれている以上、八雲は物語的にはずせないキャラだというメッセージが出ている。すくなくとも初期構想ではそうだったと見て取れる)
 
 ♭03が説明つかないんじゃない? という話になるんだけれど、♭04の前にサラと出会っておくことは「順番的」に(※2)きわめて重要。サラと出会っているにもかかわらず、八雲の恋心は変わりない、ということだし。
 
 
 ということで……。
 以上の内容は、
 
 http://d.hatena.ne.jp/liquid-fire/20071230
 
 での「通りすがりです。」の名前で発言した、

 この部分ですが、思い付きではない、と思います。
 理由は、♭初期の話の内容です。

 ♭の1話目が、見えない伊織の心の中を読みたいと願う話。
 2話目が、播磨の弟が、伊織と似ている気がするという話。
 4話目が、幽霊の女の子相手に、将来誰かを好きになる、という話。
 重要な道しるべとなる最初の展開を読むと、
 「心の見えない播磨に興味が湧く下地」を敷いている、
 という意図が推測できます。

  」
 
 の部分のある程度の詳細です。
 
 
 
 (※1)
 となると、♭01のラストと同じく、最終的には播磨の心が見えるようになる、ということが暗示されているわけだけれど……。本当にそうなるかは微妙かもしれない。
 ただ……。本当に見えるのだとしたら……。
 エピローグの最後の最後で播磨の心の中を見れるようになった八雲が見た播磨の思いが、#01のの天満の背後にある台詞なのかもしれない。
 これだとしたら#01と♭最終話がつながる。(ただし、あくまでも不確定な予想のひとつですよ……?)
 あの台詞の正体は、播磨から天満への別れの台詞となり、それを八雲が見ているというわけだ。
 
 こうなったら、ものすごいきれいな終わり方……。
 わざわざ、フキダシのない文字にしてあるのも、誰がしゃべっているのかわからないというのも見事に説明できる。
 
 でも、あくまで予想のひとつだよ……。
 あまり信じないように。
 
 
 (※2)
 シナリオ、その他には、順番によるニュアンスの違いがある。
 どれを先に語るかで、微妙な差異が生じる。
 もし、♭04のあとにサラに会う話を持ってきたとしたら、♭04で男の子を恋すると宣言していた八雲が、サラに出会ったために気が変わったという解釈も可能になってくるかもしれない。
 ♭04の前にサラにあわせているということは、♭04の八雲による「男の子は嫌いじゃない」かつ「これから好きになる」宣言は、サラという最高の友人を得た上でも、八雲はそう思っているという作者からのメッセージになる。
 このように、どのイベントをどのタイミングで起こすか、というのはきわめて重要。
 実際に物語を真剣に作るようになると、気にするようになる……。
 この、物語を出す順番を分析したのもやりたいんだけどなー。
 対比・反復は十年来のものだから簡単に出せるけど、順番と物語の関係は、まだまとめたことがないからよくわかっていない部分が多い……。いつかはやろうと思うけど。