ベクトルとは? その8 ギャップを大きくするには。
前回で、ベクトルのギャップについて話した。
では、このギャップを大きくするためにはどうすればいいだろう?
ある二つのものを対比させた場合、概念的にいうなら、Aを基点としたら、その正反対のものを用意することで、概念上ギャップは最大になる。
善が基点だとしたら、悪。
敗北が基点だとしたら、勝利。
白が基点だとしたら、黒。
こんな感じで、対極のものを対比させれば、二つのもののギャップは最大となる。
これをベクトルとして表現したらどうなるだろうか?
反復元(始点)と変化先(終点)の差がもっとも大きければ、そのギャップが最大となる。
当然、先に紹介した対比上、正反対の概念を投入することでもギャップは大きくなる。
また、前回紹介したように、常識を利用したベクトルの大きさの提示や、そのジャンルが持つ表現法を利用した大きさの提示も可能である。
そして、反復というものは時間の概念を含んでいるので、これを使ったギャップを提示することもできる。
つまり、連載上の時間、作中の時間もギャップの大きさにかかわってくる。
ただ、これには相反する二つの表現効果がある。
【1】 短期間に大きな変化をもたらせる手法。
サプライズに近い表現手法なんだけれど、その短期間で大きな変化がおきるほど強烈な何かがあったことを伝える。
一瞬前までは幸せな恋人だったという描写が続いていたとする。
そこで挿入される、ひとつの車の強烈なブレーキ音。
そして、唖然とする主人公と、動かない彼女……。
短期間で行われるからこそ、強烈なインパクトを与える一例である。
【2】 長期間で大きな変化を持たせる手法。
連載の開始から、一つ一つ積み重ねてようやくたどり着いた先が最終話、というもの。
これは、おおむね、連載の長さに感動が比例する。(※1)
ここで重要なのは、物語の最初と最後!
終わりよければすべて良し、といわれるくらいエンディングはきわめて重要だけれど、最初もものすごく重要!
というわけで、物語を作るときに、どれだけ最初と最後が重要なのか、というのを明日にでも。
対比反復の用語でいうなら、第一反復元(最初の反復元、始点)と、最終反復元(最後の変化先、終点)との重要性。
(※1)
でも、これは一概には言えない。
緊張感を持たせられる長さというものがあって、長すぎると、正直伸びて、面白くない。
短編ならではの面白さを持つ作品を長編にしても冗長だし、長編ならではの面白さをもつ作品を短くしても詰め込みすぎで面白くない。作品にはそれぞれベストな長さがあると思う。(ただ、実際にどのくらいの長さにすればいいか、というのは難しくて説明できない)