ベクトルとは? その6 「ベクトルの大きさの表現パターン」

 ベクトルの大きさについて話をしようと思っていろいろと考えたんだけど、基本的に、作中内ベクトルが定点観測できる例ってほとんどない……。
 概念として存在するんだけれど、物語が物語である以上(物を語るのが優先であるため、虚構部分の整合性は軽視される!)、どうしてもちゃんと作りこまれない部分だからなあ……。
 
 ま、いいや。
 
 視点を変えて、そのものが持つベクトルの大きさについては、あるものとあるものを比較するのがわかりやすい、という説明に移そう。
 
 ベクトルの大きさを測るには、基本的に、以下の四つ。
 
 1.一般常識を利用。
 2.作中の設定を利用。
 3.表現を利用。
 4.対比(相似)を利用。
 
 
 1の、一般常識を利用、というのはそのまま。
 戦う相手がナイフを装備したら、ナイフの怖さ=その作中の相手の強さはアップ!
 クイズ選手権のライバルが東大出身者が出てきたら、それだけでそのライバルは賢いと推測される。
 素手でコンクリートを割ったら強力なパンチだし、十円玉を握りつぶしたらすごい握力。
 こんな感じで、読者の常識をそのまま作中のベクトルの大きさに利用する方法。
 
 2の、作中の設定を利用、というのは、その作品内での共有指標を利用するということ。
 ドラゴンボールスカウターなんてのがそう。もしくは、ファンタジーもので、LV56の戦士とか、そういうの。その作品内部でしか使えない指標なんだけれど、それでも強さの上下がはっきりとわかるというもの。
 
 3の、表現を利用、というのは、そのメディアが持つ表現法を利用してベクトルの大きさを伝えるもの。
 漫画だと、戦う相手が人間離れしたサイズで描かれていたり、恋愛物だと後ろに百個くらいハートマークを飛ばしてその恋のすごさを表現したりする。
 
 4の、対比(相似)を利用、というのが、この対比・反復を説明するブログで重要な部分。
 対比は、AとBのものを比較して、AとBは違うという、作者からのメッセージを伝える表現手法。これにより、AとBが直接対決したシーンや、A対C、B対Cを描くことによって、AとBのベクトルの大きさを比較することができる。
 
 で……。
 これらを使って創作側は読者にベクトルの大きさを伝えるんだけれど……。
 今回は、4の対比を利用した部分で、とても重要な概念をひとつ。
 
 それが「ギャップ(差)」。
 
 対比は、AとBを比較して、その違いを読者に伝える表現手段。
 その場合、AとBが似ていては、その違いが明確にならない。
 そこで、作者は、AとBとの間に、「ギャップ(差)」を作る。
 恋愛もので、Aが強気&勝気系キャラなら、Bは内気&大人しいキャラというパターンが多いのはこういうところから。両者に「差」があればあるだけ、お互いの区別がつき、キャラのすみわけができ、作品にメリハリがつく。
 読者にもわかりやすいし、とても簡単で、どんな作品にもたいてい導入されていたりする。
 
 というあたりで時間。
 次は、その「ギャップ(差)」のいろいろに関して。