「ベクトル」とは?

 「ベクトル」とはいったいどういう意味だろう?
 はてなダイアリーにはこうある。(2007年9月18日現在)

1.[数学]ベクトル,動径,方向量
2.[航空]方向,進路
3.[生物]媒介動物?,保菌生物?
4.大きさと向きを有する量
5.複数のスカラーの集合?
6.線形空間(ベクトル空間)の元
7.物事の方向性
 
 今回、対比・反復構造から物語の創作法を解説するのに、一番近い概念は7の「物事の方向性」
 
 前回の「暗示」の話題からの引継ぎなんだけれど、反復元を用意しただけで、反復先を連想してしまうのは、この「ベクトル」が読者の中にあり、しかもそれがほとんどの人に共有されているから。
 
 雨のシーンを見て、気分を憂鬱にさせ、次に主人公が起こすアクションを心配するのは、雨が日本で生活するほとんどの人に憂鬱なものとしてインプットされているからだ。(雨が恵みとなる砂漠の国の人とかは別かもしれないけれど)
 また、A→A´、B→B’と来たならば、C→? の?のところに、C’を想像するのも普通だ。
 
 このように、ある事例を作中に提出すれば、ほとんどの人がその「ベクトル」を間違えずに読む。
 
 第一話で「俺は甲子園に行くんだ!」と主人公が言ったなら、甲子園に向かうのがストーリーの方向性(「ベクトル」)だと思うだろうし、告白したくてもできていない主人公がいたなら、恋愛ものになると思うのが普通。
 
 前回解説した暗示も、この「ベクトル」があるからこそだ。
 反復元を用意しても、読者の中にある「ベクトル」が違えば、読者は違う暗示にかかるに違いないのだから。
 
 というわけで、この「ベクトル」が、物語においていかに重要なキーワードかということ。
 そして、それが対比・反復構造と密接にかかわっている、ということを数回使って解説予定。
 
 でも、明日は今週のスクランだな。