「暗示」とは? その3

 結局、「暗示」を、対比・反復のキーワードを使って簡潔にまとめるとどういう意味になるのか?
 その答えが以下。
 
 「暗示」とは、「反復先」(変化先)を読者の中に連想させる技術である。
  
 別に書いてもいないのに、「反復先」もしくは「変化先」を連想させることで、その「反復先」の感情や感覚、雰囲気などを先取りさせる技術、となる。
 
 こういった、読者に先取りをさせるやり方は、「暗示」以外にもいろいろある。
 
 たとえば、「宣言」。
 
 主人公が、第一話で「俺は甲子園を目指すぜ!」といって、野球チームを集めれば、シナリオの流れは甲子園に向かう野球漫画となるわけだ。これは雰囲気や感覚じゃなく、シナリオそのものの流れを作るもの。
 
 たとえば、「予言」。
 
 「このままじゃ、負けるわよ」、と冷静な知的美女がぼそりとつぶやいたとする。その時点で、優勢、劣勢にかかわらず、読者は主人公サイドの敗北像を頭の中に作ってしまう。
 
 こんな感じで、さまざまなバリエーションがあるわけだけれど……。(予兆や予感、発言(行動)の責任などなど)
 
 すべてのパターンを簡単にまとめると、こうなる。
 
 
 「反復元」(変化元)を用意することで、「反復先」(変化先)を連想させる技術
 
 これが、「暗示」に代表される、雰囲気や流れや目的や目標を読者の中に生み出す技術の根幹である。
 
 この、「反復元」(変化元)から「反復先」(変化先)に向かう流れを、「ベクトル」と呼ぶことにする。
 
 この「ベクトル」があるからこそ、「反復元」を用意するだけで「反復先」を連想してしまう。「暗示」や「宣言」、「予感」や「予兆」といったものが効果的に働くのである。
 
 そして、この、「ベクトル」の概念こそが、物語におけるストーリー、シナリオのきわめて重要なキーワードとなる。
 んだけれど……。、「ベクトル」の解説はまた来週にでも。(多分、毎週月曜は書かないし)