「暗示」とは? その2

 というわけで前回の続き。
 
 「暗示」に関しての創作側の技術。(あくまで創作側なので、「暗示する」の方。読者からの視点だと、「暗示されている」となり分析の技術となる。この分析の技術は、「先読み」の項目を参照してもらえると、よりわかりやすい、はず……)
 
 <例3>
 「俺、この戦争が終わったら、マリアと結婚しようと思っているんですよ」
 という台詞を吐いたキャラがいる。 
 
 このシーンを見て、読者はなぜか、ああ、このキャラ死ぬんだな……、と推測する。
 
 なぜ?
 
 ある種のパターンだから。
 これは、作品外相似(作品外対比)といわれるもの。そのメディア、そのジャンルなどがもつセオリーやパターンを連想するからである。
 つまり、相似や対比がなされているにもかかわらず、それが作品外にあるというもの。(※1)
 

 <例4>
 Aが、戦いにおもむく前、大切にしていたペンダントを少年Bの首にかけた。
 Aは、帰ってこなかった。
 少年Bが大人になり、銃を取り戦いに赴く前、大切にしていたAのペンダントを少年Cの首にかけた。
 
 このシーンだけで語るなら、読者はBも帰ってこないんだろうな、と思うはず。
 そして、将来、少年Cが大人になり、また戦争に出て行くんだな、と思うはず。
 
 なぜ?
 
 反復構造から自然にできる予測だから。
 描写に、違いがない以上、反復されるのがセオリー。
 なので、対比・反復構造がわかっている読者は、自然とこのまま反復が行われるものと考える。(※2)
 
 
 ということで、
 
  例1:相似を利用した「暗示」
  例2:作品外相似による「暗示」(人間が持つ共有のものを利用)
  例3:作品外相似による「暗示」(ジャンルが持つ共有のものを利用)
  例4:反復を利用した「暗示」
 
 を紹介した。
 細かく言えば、もっと他にもあるんだろうけど、基本的にはこの四つのはず……。(ちょっと自身なし。暗示に関しては対比・反復ほど分析が進んでいるわけじゃないし……)
 
 で、この「暗示」という、作中の雰囲気や流れを作る技術には、他にどんなものがあるのか、というのを明日。
 
 追記。
 作品外相似、と書くと、外相でキーワードが浮き出るのか……。
 まあ、しかたない……。
 
 
(※1)
 作品外相似(対比)は、意識すればものすごく多い。
 一発ネタや時事ネタ、それどころかキャラの顔が有名人の誰かに似せられていたり、台詞回しが他の作品の有名台詞だったりするのもすべてこれ。
 それは、他作品の有名な部分と相似させることにより、読者の中に、それゆえの感情や興味を喚起させたり、メッセージを与える。
 
(※2)
 ペンダントを渡す相手が、「少女D」とかなら、作者から出されているメッセージが「変化」しているので、少年Bは帰ってくるんだろうなあ、という推測ができる。(だって、少女Dなら戦争に行きそうにないし。帰ってきて君(少女D)と結婚しよう、ってなメッセージにも取れるし)