「構成ヲタ」と対比・反復と「先読み」。

 世の中には「構成ヲタ」という人種が存在する。(いや、私が勝手に名づけて、勝手に認定しているだけだけど……。でもぐぐれば結構ひっかかるのね……)
 
 作品を生むにあたって、細かい部分の設定や、先を見越した伏線、キャラ関係の構図やその他もろもろの設定を作るのが楽しくて仕方がないという人種である……。
 作るのが楽しくて仕方ないのだから、そこらの公園をぶらぶら歩いているときでも作品の細部を考えて調整していたり、キャラを動かして面白いパターンはないかと常に模索しているような人たちだ……。
 
 この構成ヲタさんに、対比・反復という道具を与えるとどうなるか?
 
 「同じ(類似)」と「違う(対比)」という作中における位置や性質的なメッセージ、それに、「変化」と「変化しない(反復)」という時間的なメッセージを使って、恐ろしく細密なメタメッセージを作品に織り込んでくるのである。(※1)
 
 今回、このブログで取り上げている「スクールランブル」の作者「小林尽」は、まず確実に構成ヲタである。
 #01で張っておいた「スキーをしている姿を見たい」というのを遠足のシーンでさりげなく回収しているし、「スキマに挟まった姿」や「スキー姿」をわざわざ天満に見せて、「ア・リ・ガ・ト・ウ」と返信していたりする。
 
 対比・反復は、メッセージの意味をできるだけただしく読者に伝えるための創作法なので、普通の創作者にとっても使いやすい技術だ。
 たとえば……、同じ恋愛コメディの、「いちご100%」でも、対比構造は使われている。
 西野と東城、北大路と南戸の四大ヒロインの中心に、「真中」というキャラを置いていたりする。
 西と東の対比は、強気キャラと内気キャラ。
 北と南の対比は、大人キャラと子供キャラ。
 その中心に真中いう名前を置く、だなんて見事に対比を軸にした創作である。(※2)
 
 これが構成ヲタがやるとどうなるか……。
 
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 『School Rumble』における反復・対比・暗示のリスト
 http://d.hatena.ne.jp/liquid-fire/
 
 こんな感じになります……。(あ……、勝手にリンクを張っていますが、そこに名前が出ている「通りすがりです。」が私ですのでたぶん大丈夫でしょう……)
 
 もう大変な対比と反復……。
 普通の作家ができるレベルではない複雑なメッセージです(笑)
 
 
 さてさて……。
 長々と、「先読み」を軸にして対比・反復を語ってきたけれど、ここで簡単な結論を。
 
 読者は、対比・反復を分析することで「先読み」ができるか否か……?
 
 この問いは、こう言う角度で言い直すことも可能。
  
 作者は、先を決めているか否か?
 
 <ヒント1>
 先を決めていない作者は伏線なんてものを挿入しないだろうけれど、先を決めている作者なら伏線を仕込んでいるはず。(ただし、ノンストップ系エンターテイメントの場合は、インパクトのあるイベントの連続で見せることが重要なので、伏線なんてものは不要。なので先を決めていても、作中に伏線なんて悠長なものが入ってこない場合が多い)
 
 <ヒント2>
 構成ヲタは先を決めてから作品を投入してくる場合が多い。
 
 <ヒント3>
 対比・反復は伏線となりうるし、もとより正確なメッセージを読者に伝えるための技術である。
  
 <結論!>
 構成ヲタだとわかれば、対比・反復予測と、伏線(対比元、反復元)の発見により、先を読める可能性が高い。
 
 
 以上が、対比・反復から先読みはできるか、の解答である。
 
 
(※1)
 気づいた人もいるかもしれないけれど、類似と対比で位置、変化と反復で経過状況を示す、というのは、三次元の位置と性質と時間の組み合わせとその関係の理解で世界の現象が大体説明できるのと同様、虚構世界(小説や漫画)の現象を座標軸とそれらの関係で作品をあらわそうという試みだったりする……。比例とか、ベクトルとか、数学的用語や公式みたいなものを、対比・反復構造の用語として流用しているのは、そういう意図があったりする……(笑)
 実際にはできない話なんだけど、少なくとも流用元の土台はしっかりしているから、創作側にも分析側にもイメージがしやすい。そして、位置と性質と時間経過がわかれば、歴史の説明にある程度の漏れがないのと同様、キャラ(イベント)の位置と時間経過だけで、作中の現象のほとんどが説明できる……はず……(笑)
 
(※2)
 以下は、「いちご100%」のネタばれが混ざっている分析なので注意!
 
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 途中、いちごアクセサリーを西野にプレゼント、その後でもう一度別の機会に「いちごパンツ」を西野にプレゼントというイベントがある。
 最初、「いちごパンツ」の女の子は東城だったのに、この段階で真中の思う「いちごパンツ」が似合う人は西野だという作者からのメッセージが出ている……。典型的な、成り代わり現象であり、それを示す伏線だと思う……。
 つまり、「類似化」によるキャラ役割の変更というやつで、最後の西野ENDは対比構造から推測できる結末である。
 
 翻って「スクールランブル」の沢近と天満。
 これと似たような現象がある。
 沢近は天満に成り代わるので失敗している……(?)
 がんばってナース姿で登場している割に、播磨に見せれずに恥ずかしくて逃げたのはだめでした……。
 
 そうそう……。誰か、「いちご100%」と「きまぐれオレンジロード」の対比分析をしてみると面白いと思いますよ。
 多分、「いちご100%」の作者は、「きまぐれオレンジロード」を踏まえて、さまざまなイベントを考えたでしょうし、そもそも、「いちご:100%=オレンジロード:きまぐれ」ですし(笑) 完全に既存作品を意識したつくりのオマージュになっていると思います。
 ここで大胆予想……。将来ジャンプのラブコメに、「レモン○○」とか、「メロン○○」とか出てくると思います(笑)
 そして、それは、「いちご」と「オレンジ」とは違った第三番目のキャラとのハッピーエンドになるんでしょうね。
 
 …………。
 ううう……。いままでがんばって丁寧語を使わないようにしてましたのに、癖でどうしても出てしまいますね……。
 ま、直すのも面倒くさいですし、このままで……。