対比・反復を使って、作者が自分の意図を隠す方法。
…………。
ない。
実は、ない。
もとより、対比・反復は、作者が「メッセージをより的確に述べるための創作法」。
なので、対比・反復「だけ」を使って、作者が自分の意図を隠す方法はない。
もっとも、「対比・反復」を「利用」して、さまざまなメッセージを読み取りにくくする方法がある。
だけど……。
ここらの技法を書くのはちょっと躊躇してしまう。
基本的に、私はミステリ書き(アマチュア)。……なので、作中から出るメッセージをごまかす術をべらべらと述べるのは、手品師がネタ晴らしをするのと似たかんじだと思っている。
レッドヘリングや、叙述トリックや、ダブルミーニングや、韜晦などなど、さまざまな技術を使いこなせば、メッセージを隠すことはできるんだけど……、対比・反復とはあんまり関係のない技術だったりするし。
とはいえ、あえて対比・反復だけを使って、メッセージを隠すなら……。
1.反復させまくる。(永遠に「変化」がないと錯覚させる)
2.対比させまくる。(対比の始点と終点の候補を増やすことで、複雑にする)
の二つがあげられるかもしれない。
でも、これだって、基本的に物量による「韜晦」だしなあ……。対比・反復とは別の技といったほうがいいかも。
ただ……。
対比の軸を多少ずらすことにより、読者に判断をつかせない、ということはできるかもしれない。
たとえば、主人公を中心に恋愛対象を二人つくったとして、
A:近所にいる幼馴染
B:遠くにいる同じ夢を持つ女性
と分けて、直接比較できるようなものを与えなければ、AとBの勝負の行く末は想像しにくい、というわけ。
でも……、確かに対比の技術なんだけど、完全に対比させないことの技術だから微妙かも。
ああ……。
そういう意味では、完全に反復させず、幅を持たせて反復させると、次の反復が予測しにくくなる、というのもあるか……。
でも、これも反復の技術なんだけど、完全に反復させないことによる技術だから、微妙……。
対比・反復を完全に行った上で、なおかつ自分の意図を隠す方法はない……と思うんだけど……。
……あるかもしれない(笑)。
さて……
ここでちょっと視点を変える……。
対比・反復の、ストーリー上の役割について。
対比・反復の大きな役割に、「変化」と「非変化(反復)」を印象付ける、というのがある。
そう考えると、対比・反復をしているだけで、実は、作者の意図は隠れている(意図をばらすのを後回しにされているだけだが)のかもしれない……。
ストーリーのパターンには二つあって、
1.パターンを繰り返すもの。(非変化系のストーリー)
2.ストーリーもの。(変化するストーリー)
(あと、3.ある部分を切り取って見せるもの:四こま漫画など、もあるが……)
1は、永遠に反復しつづける物語で、水戸黄門、さざえさんなどがあげられる。
2は、多くの変化が訪れる物語で、通常の漫画はほとんどこれ。恋愛ものは、恋の実らない状況が永遠に反復しつづけたあとに、告白やキスを経て恋愛が成就するという「変化」が訪れる。
反復させることが面白さにつながるものと、反復させないことで面白さにつながるもの、というわけだ。
ここで、今回の文章にかかわってくるのは、2の方。
たとえば恋愛もの。
最終の「変化」が、恋愛成就だとすると、それまでは、ずーーーーーっと恋愛未満が続くわけだ。
未 → 未 → 未 → 未 → 未 → 未 → 未 → ………… 未 → 成就!
という感じのシナリオになるわけだ。
ということは、反復は、「最後に反復させないこと(変化)をごまかす技術」という言い方もできる……。
対比も同じで、ずーーーーっと続いていた対比が、最後の最後で崩れるのを描くために、それまでずーーーっと対比しつづけるという言い方もできる。特にライバル関係だと、最後の最後には決着がつくわけで……。最終的には対比は崩れる。
ストーリー漫画においては、対比・反復は、「変化」をよりすごく見せるための下準備である、という言い方もできる。
というのを少し掘り下げたのをまた明日にでも。
追記。
ひとつ完全に書き忘れていた……。ノートのメモにはしっかりあるのになあ……。
ストーリー漫画には、「変化」が訪れるものと、「変化」が訪れないものがある。
パターン漫画とストーリー漫画のどっちつかずのものなんだけど、パターンをストーリーで見せる、というかんじのやつ。
つまり、どんな障害があっても、「俺たちは勇気を忘れないぜ!」とか、「私たちの愛は変わらないの!」系。
周囲の状況は刻々と変わり、障害がインフレしていくが、いかなる状況がおきても主人公たちの方針は変わらない。
それこそがテーマとなっている物語。(まあ、途中で心が折れるときもあるが……大抵は苦難を経て復活する)
あえて分類するなら、反復する物語の方に入れておいたほうがいいかな?
あと、書くかどうか悩んだ項目に、「対比系」の物語がある。
群像劇と呼ばれる作品なんだけど、恋愛物や歴史物によくある、複数の価値観が衝突しあう物語。
これは、各個人では反復するけれど、別価値を持つ他人との衝突が起きるので、反復がなかなか続かない……。(戦記ものでいうなら、心半ばに死んじゃう(笑))
スクランも実は群像劇的側面がある……。
まあ、この面も含めていつかは書くかも……。書かないかもだけど……。