なぜあの22pが沢近の救済となるのか?

 というのを説明するための流れは以下のとおり。
 (ただし、手元にスクランがないので、あいまいな記憶だより。よって、間違えている可能性が高い……)
 
 1.小林尽は構成ヲタだという証明。
  → #01、#02の対比。天満と播磨のモノローグがほぼ一致。
  → スキーをしている姿が見たい、の伏線回収。(仕込みの散見)
  → 八雲をめぐる三角関係の構図のうまさ。
  などの例示。
  
 
 2.スクランは「勘違い」「間違い」が大きな障害となる漫画。
  → 通常の恋愛ものの軸となる「すれ違い」が少ない。
    (「勘違い」と「間違い」は人為的なミスなので、登場人物の努力により克服できる可能性が高い。ちなみに「すれ違い」は人為的なものより、タイミング、機会のずれで登場人物の努力では回避不可能な運命的なもの。)
  → 播磨は天満を好きなのに、それがうまく伝わっていない。「愛理ちゃんと付き合ってるんだよね」など、天満の勘違いによる障害が発生する。
  → これらを克服しつくして、すべての「勘違い」がなくなったとき、恋愛の成就に近づくと予測。
  → そもそも、告白とは自分と相手の「認識のずれ」をなくす行動。(自分は相手を好き。だけど気づいてもらえない。だからこそ「自分の気持ちを伝える(自分が、相手を好きだという状態を知ってもらう)」のが告白)
  → 最終的には、「俺がすきなのは塚本、おめーなんだ」という告白が待っているはず。つまり、「恋愛認識のずれ」を修正する行動が、恋愛ものにおける告白の意味。
  → したがって、「認識のずれ」をもたらすものは、物語に大きな影響を与える。
 
 
 3.播磨の持つ「仮面」=「ヒゲとサングラス」が持つ意味。
  → 播磨のヒゲとサングラスは、過去の自分を隠す仮面。つまり、天満に「認識のずれ」をもたらしている。
  → 最終的に「変態さんばれ」を行わないと、播磨の真の姿を知った上での恋愛とならないと予測。
  → 播磨に与えられた課題は、「すべてをばらす勇気があるか」=「自分の恋心」および「変態さん」を告白することができるか。
   ヒントA:サングラスを取った時の告白練習の時、天満は播磨にどきどきしていた。
   ヒントB:天満と播磨の二重夢の時、告白する播磨の目はサングラスから透けて見えている。
   以上より、「変態さんばれ」と「告白」は、小林尽の中でリンクしている可能性が高い。
   ヒントA、Bが予言として成立するなら、ヒゲとサングラスを取った「変態さんばれ」告白は、天満に対してきわめて効く可能性がある。
  → 以下は、補足的追記。ただし……。沢近お寺お泊りイベント時の従業員さん(播磨)のヒゲなしサングラスなし「笑顔」が予言として機能するなら、「すべてを受け入れて笑ってやる」といっているので、その後で(おそらくは日を置いて)天満に振られる可能性が高い……。(そして、さらにそれがヒントかつ予言なら、その沢近はそのとき改めて播磨に惚れ直すということになる。→つまり、播磨が天満に振られた後、沢近は播磨をより好きになる可能性が高い)
 
 
 4.沢近の持つ「仮面」
  → 沢近の持つ「仮面」は、かわいく振舞うこと。
   ヒント:沢近のキャラの軸は「かわいければいいのよ」。
  → これは単なる恋愛観ではなく、同性に対しても影響力が「あった」。
  → それを破ったのが、美琴。家につれてきて、沢近の本性をさらけ出させる。(以降、同性側への「仮面」は消滅したと推測される)
   その証明として、天満から見た沢近像があげられる。沢近が意図的に笑顔練習をしているのを見た天満は、「愛理ちゃんがおかしいの」と認識する。沢近本人にはとてもかわいい笑顔のつもりだが、天満相手には、それが、いびつな演技としてしか受け取られていない。
   ただし、天満は基本的に人を見る目はものすごくいいキャラなので、天満の分析能力が高かったという証明かもしれない。
  → 以上、同性への「仮面=認識のずれを生むもの」ははがれているが、異性への仮面は?
  → 沢近が恋愛観を語っているシーンで、「かわいくふるまえばいいのよ」とある。(← と書いたが、記憶はあいまい……)
  → つまり、異性に対しても、「かわいさ」が演技であることが描かれている。
 
 
 5.その上で例の22p。
  → 22pにいたるまでに、沢近の「勘違い」がほとんどなくなっている!
  → 播磨は、沢近のことが好きなのではなく天満のことが好きと、現状を認識する。(つまり、播磨と沢近は両思いではない)
   「勘違い」や「間違い」が恋愛の障害として設定されているスクランなので、「勘違い」のクリアはきわめて大きなポイントとなる。もし、物語の終盤まで、「播磨がすきなのは自分!」と沢近が思っていれば、沢近と播磨ENDはなかったと予測。もし、作者が、沢近ENDを用意するためには、どこかで「勘違い」をクリアしなければならず、それが22pまでで行った大きな流れである。
  → そして、播磨相手に、「もっともかわいらしくない顔を見せたこと」=「キモい」。これは、対播磨に対する異性への仮面を脱ぎ去ったことを意味する。つまり、いかなる状態でも仮面をかぶることなく、ストレートに感情を出せるようになっていることを意味する。
  → オイスターバーに強引に誘ったときの沢近が、「特殊な」書き方でかわいらしくかかれているのは、「キモい」につなげる対比だと分析。つまり、オイスターバーに誘ったときの沢近は、通常の異性に対する一番の仮面。逆に、「キモい」はそういうものを完全に取っ払った、「もっともかわいらしくない、まったく演技のない顔」。
  → 以上、1から4までで述べてきた「仮面」や「勘違い」などの障害が、この22pで完全にクリアされた状態になる。
  → メタ的にいえば、沢近だけ、対播磨に圧倒的有利の立場にたつことになる。(勘違いをなくし、仮面もなくし、きわめて自然な状態で、恋愛という勝負を挑めるポジションに)
  → なので、あの22pは、小林尽が、沢近を救済するためにつくった流れじゃないか、と分析。
 
 
 と……。
 長々と書いてきたけれど、半分あと付けに近い。
 22pを読んで、一週間後くらいには、すでにこの分析をしていたのだけれど、さすがに引き方が微妙だったので(「あ、梅の香り」の顔がかわいく描かれていなかったので、沢近からみればマイナスに向かうのかな……という思いもあった)、逆に沢近は播磨のことをあきらめた可能性もある……と思ったことも。(そのときは、八雲のせいで降りたのだから、沢近は八雲のサポートキャラになるのかな? と言っていた……。「天満」対「八雲&沢近連合軍」というのは物語的には面白い構図だし、将来的にはありえなくもないけれど、短期的には完全に外れた予測だ(笑))
 
 ふう。今日は、これまで。