小林尽は構成ヲタか? の問題について。

 
 ううう……。
 正直、どうやったら上手く説明できるかで悩んでいます。
 
 というのも、ピンと来ていないというのが正直なところなのです。
 構成ヲタというのが、なぜ演繹と帰納の二択になるのかがわからないんですよね……。
 
 引用されている小林尽のインタビューを読んでも、「うんうん。そうだよなー」という感じで納得するだけで、特別に言うことはありません……。(※1)
 
 なので、いつもならすぐにアップするだろう返信日記がこんなに後回しになっているのです……。(いえ、理由はもう一つあったりします。来週、ある提出物の期日がありましてですね……、それを頑張って作っているわけです……。昨日まで一週間連続で、一日十時間ぐらいそれにつぎ込んでいました(笑) それでもまだ完成しません(笑) いや、作っているのがむちゃくちゃ楽しいっすから、いいんですけどね(笑))
 
 という訳で以下……。
 インタビューの引用をコピペさせてもらった上で……。
 
 

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小林 それほどきっちり決めてはいませんが、だいたいこんな感じで締めようというのはあります。ただ僕の場合、話やエピソードは編集さんとの打ち合わせや描いていく中でできていくという感じで、方向性も変化することがあるんです。この作品についても、最初は戦時中の出来事を拾っていく話にしていこうと思っていたのが、だんだんと戦争の部分が主軸になっていって、今はそこを基点に考えてキャラクターに役割を与えるようになりました。
 
 

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 最初は、あえて、真正面から噛みついた意見を、一つ、書いてみますね(笑)
 
 この「それほどきっちり決めてはいませんが」は、「基本部は決めている」ことの証明でもあるし、「だいたいこんな感じで締めようというのはある」ということは「最後までの方向性がだいたい決まっている」ということです。
 いずみのさんがクローズアップしていた「方向性も変化することがある」というのも、「ことがある」だけで部分を説明した言葉です。全体的にこうだというわけじゃありません。 
 
 という見方もできるんです。
 
 実際、超構成ヲタである永野護の『ファイブスターストーリー』でも、設定はぽんぽん変わります(笑)
 また構成ヲタでも考えていない部分は大量にありますし、いきなり新キャラを投入したりします。
 
 
 …………。
 
 
 とはいえ、これは、あきらかに話術優先ですね……。
 実際にそうかは別として、言い方で上手く自分の土俵に引きずり込む手法です。
 
 

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 というわけで、以上の発言をとりあえず取り消し、対決姿勢を解除した上で、以下、私が思っていたことを率直に述べますね。
 
 
 構成ヲタを、帰納と演繹の二つに区別するところがわかりません。
 
 いずみのさんは、演繹の作家は構成ヲタではないと考えられているようですが、実際には、構成ヲタと「演繹よりの作家」というのは矛盾しないんです。
 
 簡単な話なのですが、構成ヲタは初期設定(裏設定)をも大量につくり、そこに制約されて物語を展開するからです。
 
 演繹よりの構成ヲタなら、初期設定を重視するでしょう。(重視するだけで、当然先をも考えます)
 帰納よりな構成ヲタら、将来の展開を重視するでしょう。(重視するだけで、当然初期設定も守ろうとします)
 
 それだけのことだと思います。
 構成ヲタであるという事実と、「演繹より」というのは矛盾しないんです。
 
 スクランも大量の初期設定があると思われます。
 そして、どうやらそれに縛られて作品を書いているらしいというのが分かります。
 
 実際に、塚本姉妹の両親がどうなっているのかは伏せられたままです。
 その他、烏丸と八雲をこないだの回まで直接接触させなかったのはとっておいた演出でしょう。
 また、それら以外にも、各種の謎が残されたままです。
 
 いずみのさんは、構成ヲタは「帰納より」と考えておられるようですが、構成ヲタは、初期設定も大量に作る人種であることを忘れているように思います……。
 初期設定が大量にあるからこそ、それらにしばられた「伏線」や「そのキャラならではの謎の行動や発言」が生まれるわけです。
 
 実際に、「そのキャラならではの謎の行動」は、スクランでは大量に見かけられます。
 
 はっきり言いますが、小林尽が構成ヲタであるという認識は、あんまり変わっていません。実際に、大量の設定や、構図、伏線を張っています。
 「だいたいこんな感じで締めようというのはあります」と発言しているのも大きいです。それは私が思っていた小林尽像にぴったりですから。
 
 簡単に、まとめます。
 演繹よりと帰納よりという区別は、構成ヲタであるという事実になんら関係がないと思います。
 
 
 …………。
 
 ……あら……。
 なんだか、対決姿勢気味です……。
 
 ですが、率直に言うとこうなるんですよね……。
 
 

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 次に……。
 
 対比構造・反復構造の話です。
 いずみのさんの「「演繹法」と相性の良い反復対比」という話はものすごく面白かったです(笑)
 
 いやあ……、私が気付いていなかった視点です(笑)
 
 確かに、言われてみれば演繹法でも相性が良いですし、使いやすいですからね……。
 まさに目から鱗……。
 
 あの文を読んで、これから対比構造、反復構造を使おうとしてくれる方が出てくるんじゃないか、と思っちゃったほどです(笑)
 
 
 まあ、そこらはさておき、対比構造と反復構造の確認です。
 対比構造と反復構造は、創作側が正確にメッセージを送る技術です。
 ですので、演繹法帰納法、どちらで作品がつくられていようが、その両方に対応できます。(つまり、対比構造・反復構造は、演繹法帰納法とは無関係)
 
 ただ……。
 「正確にメッセージを送ろうとする」ということは、作者側で決めているもの(こだわり、用意された設定、しばられる辻褄など)が大量にある、という事を示唆しています。
 これが、「対比構造、反復構造を使う作家には構成ヲタが多い」という私なりの考えにつながるのです。
 
 

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 付け加えて、私がやってきた分析について、関連しそうなことを語っておきます。
 
 まずは、いずみのさんが書いた文章の引用から。
 

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 ミステリ者であり、自らも構成オタを自称するぼんやりさんは主に「帰納」を使ってスクランを読んでいる感じですが、ぼくはどちらかといえば「演繹」をメインにして読む読者です。 
 

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 いずみのさんは、私の「読み」を「帰納」とおっしゃっていましたが、私なりに正確に言い直しますね。
 
 私の「読み方」の中でも、作中の情報を得る能力に関しては、帰納でも演繹でもありません。
 先に言いましたように、「対比構造分析」「反復構造分析」は帰納的でも演繹的でもありません。ただ、あるがままに「同じ」だから「同じ」、「違う」から「違う」と言っているだけです。
 
 これは、絃子分析やその他をご覧になっていだければわかると思います。
 私の「予測」が入った部分は別として、「対比構造分析」および「反復構造分析」に帰納的な視点も、演繹的な視点もはほぼ皆無です。
 「ここにこう書かれているからこうだ」と分析しているのがほとんどの筈です。
 
 「対比構造」も「反復構造」も、作者が正確にメッセージを出す創作側の技術である以上、「対比構造分析」、「反復構造分析」はその逆──出されたメッセージを正確に読み取る技術なんです。
 
 まとめると、私が最初に情報を取得する方法は、帰納でも演繹でもありません。
 
 

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 それとは別に、ですね……。
 ようやく、私が痛みを覚える部分を……(笑)
 私の「予想法」の話です……(笑)
 
 いずみのさんがおっしゃる「読み」とは、私の「予想」のことだと思います。
 実際、私の予想は、演繹法ではなく、帰納法です(笑)
 
 これもご指摘のとおり、私が「本格ミステリ」畑だからですね。
 全ての情報に意味と意図があること前提で、先の展開を当てようとするんです。
 
 事実、「通りすがりです。」で発言し、いずみのさんのブログで伏せられている予想は、ある設定に「将来の演出意図」があると推定して行ったものです。
 
 わざわざそう設定しているのは、このような演出を用意しているからじゃないか、というものです。
 ですので、もしあの設定に「意図」がなければ、外れる可能性の方が高くなるでしょう。
 
 

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 ふう……。
 こんな感じでしょうか……。
 
 以上をもって、とりあえずの返信にしたいと思います。
 
 かみ合っていない箇所があったり、私の認識で間違えている箇所があれば、指摘をお願いします。>いずみのさん
 
 

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 …………。
 …………。
 
 裏話です……。
 
 ちなみに、今回はちゃんと返信しましたが、案としてはまったくコンセプトが違う返信にするアイディアもありました……。
 
 悪役レスラーばりなマイクパフォーマンスで、
「なら、いずみのさん! 私とスクランの最終展開予想で勝負だ!」
 という感じにもってく奴です(笑)
 
 この勝負、見たい人が大量に出てくる企画だと思います……(笑)
 
 お互いに全力を尽くして最終展開の予想をするでしょうし……。
 
 まあ、でも、アイディアだけで収めておくほうが無難かもしれません……(笑)
 
 

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 というわけで、相変わらず長くなりましたが……。
 
 

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(※1)
 構成ヲタを、私を例に説明しますね。
 
 私は、現在ネットの某所でとある作品を発表しています。
 今のところ二十話前後あるのですが、九十話から百話までのラストの展開はほとんど決めてあります。ですが……、間の二十数話から八十五話ほどまでがスコンとありません(笑)
 ある程度、こういう話を入れるんだろうなあ……というのはありますが、細部はまったく決まっていません。
 このように、初期と最終が先に決まり、ドーナツ状になっている状態というケースが多いです。
 連載が長くなれば、そのドーナツ化はさらに大きくなるでしょう。
 そして、ドーナツの穴を埋めていけば、当然、最後に影響します。
 初期にはまったく設定していなかったキャラが重要な存在になっていて、ラストの展開に関わってくるなんてこともあるでしょう。そうなれば、当然ラストは変わります。
 こういうのが実体験としてありますので、小林尽のインタビューの引用を見ても、「うんうん。そうだよなー」なのです……。
 
 というか、小林尽もドーナツ型っぽいですね……。
 
 

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